浅倉秋成 - 教室が、ひとりになるまで
教室が、ひとりになるまで という本を読んだ。
クラスの価値観の押し付けがやけに強いなと思ったら、やがて価値観の押し付けがテーマであることが分かった。ミステリ要素が主らしいが、自分にとってはこちらの方が興味深かった。
同調圧力と内心のギャップに耐えかねて自殺した友人をきっかけに、犯人は原因を作った連中を殺し始める。しかし同調圧力は学校の外でもありふれていて学内の人を殺して解消するわけではない。このことを犯人が読者に先回りするように言うのが面白い。
殺人で得られるものは学内で一時的なのに対して、その重みは一生付きまとうことになるので割に合わない気がする。自分はこの問題については一時的に耐えるか、別のコミュニティを探すのが答えではないかと今のところ思っている。ただ、この意見についても犯人はどうして耐える必要があるのかという反論を用意している。
犯人は主人公である垣内の弱みを突こうとする。実際垣内はうろたえる。垣内の「犯人の気持ちはわかるが殺人は許されない」という表明について、八重樫は「犯人の気持ちはわかる」という点を許せないようだが、これには10代らしい厳しさを感じる。醜い感情や不謹慎な気持ちが湧くのは人間として当然で、それを表に出すかそうでないかが犯人と垣内の違いの気がする。
最後に垣内は孤独と対峙する。事件が収まっても、派閥に振り回されることについては結局解決しない。バイト先や家族の無理解がやってきて、垣内の先輩たちはコミュニティに従う素振りを見せはじめる。垣内は自身を社会不適合者だと言い張り、悲しみに暮れる。
垣内に共感する人は垣内の想像以上に多いのではないかと思うが、それがわかっても苦しさは消えなさそうなのがやるせない感じがする。
社会で生きていく上には0か100ではなく折り合いが必要だと思う。これを言うのは簡単だが、作中の主要な人物が自分の価値観を信じてやまない人たちばかりで交渉の余地が無さそうであるように、実際には難しいことでもある。
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