闘うプログラマー という本を読んだ。
本の内容について
この本はWindows NTの開発の様子を取材して書かれたものだ。
当時MicrosoftはIBMを得意先にしており、そのIBMとの共同開発のOSであるOS/2の次世代版としてNTを開発し始めた。ところが自社OSのWindowsがヒットしてMicrosoftは方針を転換した。MicrosoftはNTにWindowsのUIとAPIを載せ、Windows NTとして発売した。
自分はデビッド・カトラーについてはWindows NTを作った人という程度の認識しかなかったが、読み始めからカトラーが椅子を蹴っ飛ばす描写を見て、恐ろしい人であることを知った。
NTの開発時はビルドのために専任者を用意し一日かけてビルドをして、それからバグに気が付くような世界だった。
そしてこの開発においてソフトウェアの品質を維持する手段は、質の悪いコードを持ち込んだ者に辛辣な言葉を浴びせることだった。本の描写は淡々としているが開発は苛烈を極めたようで、品質確保のためにスケジュールが何度も延ばされ、燃え尽きて退職する者が発生し、生き残ったメンバーは大切な人間関係を失ったという。それでも新しいものを作るというメンバーの自負とカトラーのカリスマ性によってNTは完成した。
現代では開発マシンはいくらでも良いものを使えるしソフトウェア開発環境は何でも整備されている。間違ったコードをコミットしてもCI/CDが即検知する。効率的な仕組みは先人の過酷なやり取りの末に確立されているのだろうと感じた。
オリジナルのコードがどこまで残っているのか自分は知らないが、2026年時点の最新であるWindows 11もNTがベースだという。かつてWindowsは消費者向けにはWindows 9x系、サーバー向けにはWindows NT系が用意されていたが、9x系はWindows Meで終了しWindows XPで両者がNT系に統合されている。
消えていったOSについて
話が逸れるが、この本が出版されたのはWindows NTが革新的で成功したからだろう。Windows NTの成功の裏で消えていったWindows Meに焦点が当たることはない。
カトラーと同じようにWindows Meの開発を牽引したエンジニアがいたはずだが、当時を語る本はないようだ。その理由は想像するしかないが、Microsoftは初めから9x系のWindowsを消滅させるつもりでいてWindows Meの開発は片手間なものに過ぎなかったのかもしれない。あるいは社内にも当時の情報が残っていなくて語ることがないのかもしれない。
Windows Meの開発メンバーは消化試合のような感覚を抱いていたのだろうか。有名な割に事情が語られないWindows Meは何だか将来カルト的な人気がやってくるような気がする。もしそんな人気がやってくるなら、当時を語れる人がこのままいなくなってしまうのは惜しい気がする。
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